社内コミュニケーションの最適化において重要な「社内ポータルサイトの作り方(プロジェクト体制・推進方法)」を、前・中・後編にわけて解説します。
前編となる今回の記事では、ITツール導入における「利用範囲」と「プロジェクトの型」の関係、社内ポータルサイトの構築に適している「協創プロジェクト」の推進方法などについて紹介します。
社内ポータルサイトの作り方中編:「協創プロジェクト」に最適な導入ステップとは >
社内ポータルサイトの作り方後編:運用設計で良質なコンテンツを発信し続ける「仕組み」づくり >

システム導入の方法・体制は
「利用範囲」と「影響度」で変わる

インパクトと利用範囲の違いによるITプロジェクトの型

利用範囲が狭く特定業務を改善するタイプのITツールの導入はIT部門が先導することが多いです。しかし、コミュニケーション基盤となる全社ポータルのような利用範囲が広く全社インパクトが大きいITツールには、メインで利用する社員が主役となる「会社の未来に向けて一緒に作るプロジェクト」が適しています。各部門からの精鋭メンバーで編成されたプロジェクト体制を整え、自分たちが作っている手作り感、完成物に対する腹落ち感を醸成すること(コト起こし体験)が重要な成功要因になります。

社員が主役の協創プロジェクト 成功のポイント

「腹落ち感」

協創プロジェクト 全社員の腹落ち感を作ることがポイント

協創とは「協力しあい一緒に創る」という意味で、社員が主役となり会社の未来に向けてコミュニケーションの場を作るのが協創プロジェクトです。全社ポータルはシステム導入ですが、本質は会社のありたい姿を投影する場づくりで、ITシステムという「モノ作り要素」が3割、ありたい姿という「コト起こし要素」が7割ぐらいの割合を意識し、プロジェクトに臨む姿勢が大事です。別の表現で言い換えると、「ポータルという箱(モノ作り)を作っても、それを使う社員たちの意気込み(コト起こし)が入っていないとなにも始まらない」ということです。全社ポータルを箱モノ行政にしてはいけません。「仏作って魂入れず」と、昔の人はよく言ったものだと感心します。

さて、その協創プロジェクトのステップは、モノ作りに軸足を置く典型的なシステム導入のプロジェクト工程とは大きく様相が違います。システム導入は「要件定義→設計→開発→テスト→リリース」と進みますが、協創プロジェクトはコト起こしを重視し「1.チームビルディング→2.ポータルデザイン→3.テストマーケティング→4.プロモーション→5.効果測定」のステップで進めます。

各ステップの目的も特徴的です。

 チームビルディングは、当事者意識とワクワク感のために。
 ポータルデザインは、自分たちの作品にするために。
 テストマーケティングは、成功事例を自作自演するために。
 プロモーションは、みんなへ伝え期待を高めるために。
 効果測定は、効果をデータで示すために。

このようなステップを経ることで「自分たちで作り上げたポータルである」という腹落ち感が醸成され、それが協創プロジェクトの成功につながります。特に「2.ポータルデザイン」において、掲載するコンテンツの内容やデザインを自分たちで検討し、プロトタイプを構築しブラッシュアップを重ねてあるべき姿を追求していく過程が「腹落ち感」獲得の肝になります。

(弊社で提供しているInsuiteXは、非IT部門の方でも社内ポータルサイトを簡単に構築できます。気になる方はぜひこちらもご覧ください。→ 3分でわかるInsuiteX

どう作るのか? どう進化するのか?

フォーメーション

プロジェクトのフォーメーションは、それ自体が協創プロジェクトの成否を分ける重要な要素であり、必要なメンバーを揃えられれば半分は成功したようなものです。

最強チームを揃えれば半分は成功したようなもの

経営キーマン
全社に影響力を持つ経営キーマンはプロジェクトオーナーとして参画し、プロジェクトの開始・中間・完了の判定や全社展開前の社内プロモーションで太鼓判を押すなど、全社への波及効果を最大限発揮してもらいます。
改革リーダー
プロジェクトのリーダーとして全社の過去・現在・未来を考えられる、中堅の社員が適しています。部門でいうと経営企画や業務改革の次長クラスで、30代後半〜40代半ばぐらいの方が適任です。多くの部門を巻き込みそれぞれへの配慮や調整(後ろ向きの忖度ではなく前向きのパラダイムシフト)も伴うためか女性が活躍されることも多くあります。
広報キーマン
コミュニケーション領域のプロとして広報からのメンバーも欠かせません。実際に現在の社内コミュニケーションの一躍を担い、現状課題の刷新イメージを明確に持っていることが多いです。また、社内報など別のメディアの発信内容の仕組みとポータルの棲み分けが発生することも多いため欠かせない存在です。
活用キーマン
利用開始後に運用の中心となるメンバーも、プロジェクト初期から主要メンバーとして参画してもらいます。全社ポータルが作られた経緯を詳しく知らずに活用を担うことは難しく、また前工程を引き継いだようになると自分ゴトとして捉えづらくなるためです。
反対キーマン
ほかのプロジェクトではまず入れないであろう、反対キーマンにもプロジェクトに参画してもらいます。これには2つの意味があり、1つ目は潜在的反対勢力を抱き込むという点と、2つ目はそういう方は良質なアイデアを持っていることが多い点です。新しいコトを起こすには今までにない発想や視点が多いほど良くて、そういうタイプの方の得意とする別角度からのアプローチを大いに活かします。

いずれのポジションも重要な役割を担ってもらうため、間違っても若くて特定業務に紐づいていない人や暇そうにしている人をアサインしてはいけません。

社内コミュニケーションデザイン“最適化に必要な4つの設計要素”

社内ポータルサイト導入プロジェクトでは、ポータルという場所だけでなく、上位概念である社内コミュニケーションを4つの要素からデザインします。

 内容設計(なにを載せる?)
利用対象に応じたポータル種類に分けて内容設計を進めます。
 機能設計(どれを使う?)
コミュニケーションの最適化を目指す上で、どのツールになにを託すのか、適材適所を決めます。
 構造設計(組織構造は?)
指揮系統は組織構造を重視します。そのためITツールの上でコミュニケーションに適した組織構造を用意します。
 運用設計(どう運用する?)
前述の1、2、3を設計し、具体的なコミュニケーションデザインが仕上がったあとに継続的な運用を考えます。

多くのITベンダーは、2の機能設計の部分にとどまり、自社製品の設定(いわゆる初期設定)以上は対応しません。それでは全社にまたがるコミュニケーションになんのインパクトも与えられません。
「だれに対してなにを伝えたくて、どの機能をどう活かすとそれが実現し、どういう運用体制でその状態を維持するのか」という、社内コミュニケーションの中心となる論点になんら答えていないからです。

ドリーム・アーツは「自社製品の初期設定」を大幅に超えた、お節介なくらいのデザイン設計をお客さまと進めることにしています。ここまで広範囲に徹底して考えたコミュニケーション環境ならば、その会社へ大きなインパクトを与えられるということがわかっているからです。これは長年、お客さまと一緒に社内コミュニケーションを変革してきたからこそ得られた実践知です。

目指すべきゴールは「1st success」

協創プロジェクトにおけるもうひとつの特色は、「利用開始」はあくまで通過点であり、「1st success」 という目指すゴールを達成した時点をプロジェクト完了とする点です。ポータルの利用開始とはユーザーにお披露目されただけの状態であり、本来狙っている効果の達成にはそこから少なくとも6ヵ月間はかかります。運営サイドも利用者サイドも「社内コミュニケーションの新しい場所がきちんと機能している」と感じるまで、効果測定を進め微調整を重ねながらゴールを目指します。


<中編 チームビルディング・ポータルデザイン・テストマーケ・プロモーション につづく>


mv-se200729-mv-03

社内コミュニケーション大解剖セミナー動画を公開中

日立物流さまが実際におこなったコミュニケーション改革の事例を交え、社内コミュニケーション改善における秘訣からツールまで徹底解説!社内コミュニケーションに課題をお持ちの方、必見です。 ​

kuriki_circle

執筆者
栗木 楽(くりき らく)
株式会社ドリーム・アーツ 協創パートナー推進本部 副本部長

大企業コミュニケーションのReデザインを得意とし、数万人の企業のコミュニケーション改革プロジェクトの推進役を多数経験。お客さまプロジェクトではさまざまな部門からの多彩なメンバーと一緒に、部門間・階層間のタコツボ化解消に真正面から取り組んでいる。日本企業の底力を上げるために、実践知を活かして組織開発とITの融合でアプローチする。