「管理部門と現場部門」における組織の軋轢と協力の謎を紐解く
2021年4月15日、チーム開発や組織開発のプロであるスコラ・コンサルトと大企業のコミュニケーション改革を先導してきたドリーム・アーツが、共催セミナーを開催しました。ビジネスパーソンなら一度は考える「社内コミュニケーション」と「エンゲージメント」をテーマに、変化を恐れない組織づくりを考えるシリーズ第2回となる本セミナー。それぞれの立場から部門間コミュニケーションの「あるある」問題を解説しました。参加者へのアンケートや登壇者のフリップ芸で和気あいあいとした雰囲気で開催された模様をお届けします。
目次
セミナー概要
登壇者:左からドリーム・アーツ髙橋、栗木、スコラ・コンサルト岡田、杉本
企業の組織づくりや社内コミュニケーション醸成には、コミュニケーションで目に見えない部分(ソフト面)と見える部分(ハード面)の2つの側面があります。
スコラ・コンサルトは組織開発や組織風土改革をもとに企業のソフト面に影響を与え、ドリーム・アーツはITを使って企業のハード面の改革を先導してきました。本セミナーでは、2つの側面からコミュニケーション問題をとらえ、日本企業独自の組織の在り方から解決に向けたアプローチをご紹介します。
企業の組織づくりや社内コミュニケーション醸成における2つの側面
- ソフト面=コミュニケーションにおける目に見えない部分
- 思い、意志
- 共有された価値観、理念、哲学
- 判断、行動特性
- 仕事の仕方、チームの働き方
- ハード面:コミュニケーションにおける目に見える部分
- 業務プロセス
- 仕組み、制度、体制
- ミッション、戦略
管理部門と現場部門の関係性とは?
葛藤が生まれる背景
はじめに、管理部門と現場部門とのコミュニケーションでよくある問題を例を挙げてご紹介しました。
管理部門と現場部門とのコミュニケーションでよくある問題例
- 現場部門が不便な仕組みを管理部門は使い続けさせる
- 管理部門は仕組みを変えたいが現場部門は嫌がることがある
- 管理部門のリクエスト(業務指示)が現場部門にとって雑務に感じる
- 管理部門は一丸となって施策に取り組めばいいのにバラバラで動いている
- ITシステムの担当者が業務改革を指示されてミスマッチングが起こる
なぜ管理部門と現場部門との間でこのような葛藤が発生するのでしょうか。スコラ・コンサルト岡田氏は、全体最適をはかる管理部門と個別最適をはかる現場部門の間には、常に葛藤が生まれる構造にある、といいます。
管理部門は経営層の指示のもと全体最適で会社方針を展開していきます。また、現場部門の状況を理解せずとも、ある程度の強制力を効かせ動かすことが可能です。
しかし個別最適で効率的に仕事を進める現場部門にとって、実態に即さない方針や施策は腹落ちすることができません。形式的に対応するも、事実や実情は経営層へは伝わらないまま同じことが繰り返されます。
管理部門と現場部門の本来あるべき姿とは
変化や多様化の激しい時代のなかでは、経営層と現場部門、それぞれが臨機応変に対応することが求められています。
経営層は全体最適をはかりながら外部環境や内部環境を踏まえた方針を立て、現場部門は経営方針を受けとめつつ、事実・実態と向き合いながら柔軟な対応が必要とされます。そして、経営層と現場部門が同じ方向に進むことで組織としてのパフォーマンスを最大限に発揮することができます。
管理部門は、経営層の意向を形式的に遂行するのではなく、経営層と現場部門の方向を合わせるべく「意志を持った戦略的連結機能」として経営層と現場部門を繋ぐ必要があります。
日本企業の問題点と解決アプローチ
日本企業の特徴と問題点
スコラ・コンサルトは、約35年間もの間、多くの企業の組織風土改革をおこなってきました。その経験から日本ならではの組織文化や企業の特徴が判明しました。
日本企業には「調整文化」と呼ばれる組織の文化と「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる雇用形態が存在します。「調整文化」と「メンバーシップ型雇用」は、『タテマエ(形式)を重んじ変革や衝突などの混乱を避ける』『ジョブや業務ではなくメンバーや組織を強く意識する』といった特徴を持ちます。
形式を重視するあまり本音や実態が見えづらい側面があり部門間でのコミュニケーションを阻害する要因となっています。しかし、共感力が高く人との繋がりを大切にするポジティブな側面もあり、意志や想いに共感し腹落ちがされた瞬間、高いパフォーマンスを発揮する特徴を持ちます。
いかに経営層の方針や想いを現場部門へ腹落ちさせるか、管理部門は「意志を持った戦略的連結機能」として経営層と現場部門を繋いでいかなければなりません。
組織開発のプロが教えるアプローチ
組織開発は、診断型組織開発と対話型組織開発の2つの手法があり、スコラ・コンサルトは対話型組織開発を得意としています。
管理部門は「意志を持った戦略的連結機能」として、どのように経営層と現場部門を繋ぐのか、そして、どのような組織となるべきか、アプローチ方法を紹介していきます。
まずは対話を通して、経営層や現場部門の想いや実情を深く理解することが重要です。
丁寧なヒヤリングにより事実・実態ベースの施策立案が可能となります。ただし、共感が持たれないまま正論を伝えても、現場部門は腹落ちしないため、腹落ちマトリクスという対話のフレームワークを参考に段階的に対話を進めていきましょう。
合わせて、自部門の仕事の質の抜本的な改革をおこないます。 管理部門の顧客である、経営層と現場部門に対して、どのような価値を提供していくか、自部門内で対話をおこない、役割を再定義していきます。
価値とは、マーケティングの大家、P.F.ドラッカーの言葉を借りるならば、「お客様が価値と考えているもの」です。つまり、管理部門は、経営層と現場部門が価値を感じているかどうかが重要ということです。
どのような価値を提供していくか検討するためには、思考パターンや行動様式を変革する必要があります。
課題には「技術的な課題」と「適応を要する課題」の2つあります。 価値提供の検討は「適応を要する課題」に当てはまり、やり方(Doing)を検討するのではなく、あり方(Being)を追求していきます。
管理部門はこれまでのやり方(Doing)に偏った考え方を、あり方(Being)を議論できる思考パターンに変えていく必要があります。
そうした上で管理部門から対話を働きかけることで、さまざまなテーマで意志や想いを持つ社員が対話する場ができ、そのような対話の場から価値観の一体感や新たなアイデアを生み出すことができるといいます。
管理部門は「意志を持った戦略的連結機能」を持つことで、さまざまな対話の場を生み出すことができます。そして対話により、変革を起こし続ける組織に変えていくことができます。
スコラ・コンサルトでは、さまざまな対話の場をつくることで、日常業務を遂行する公的な組織と、意志や想いのエネルギーに溢れた人同士が繋がり新しいコトを始めるコアネットワークという組織(インフォーマルな組織)のデュアル組織をつくることを支援しています。
このデュアル組織は、安定的に日常業務を回しながら自ら変革を起こすことができる組織構造となります。そしてその組織は「自分たちの組織を自分たちで進化・成長させ続ける組織能力」を獲得し変化に強い組織となっていきます。
コミュニケーション改革のプロが教えるアプローチ
大企業のコミュニケーション改革を先導してきたドリーム・アーツからは、ITを活用した解決アプローチをご紹介しました。
企業内のコミュニケーションは3階層で構成されるとし、各層を会社のインフラ・ビル・部屋に例えて説明しました。第3階層である「業務遂行のコミュニケーション」を円滑におこなうためには、第1・2階層が整っていることが前提となります。
巨大な組織になるほど、全社に及ぶコミュニケーションを管理、促進することは難しくなっていきます。少数精鋭の管理部門がコミュニケーションのハブとなり会社全体を動かすには、ITのパワーを最大限に活かしていくべきだといいます。
ITを活用するには、「接続性」「可視性」「要約性」「協働性」の4つのポイントがあります。 ITによって、「接続性」「可視性」「要約性」の3つが揃ってはじめて、他のメンバーとの「協働性」が生まれ、双方向からの協働が促進されると考えています。
「協働性」を生み出すには、コミュニケーションを7つのレベルで考え、それぞれのレベルでITを活用していくことが必要です。
■コミュニケーションの7つのレベル
コミュニケーションの7つのレベルそれぞれでどのようにITを活用するのか、セミナーよりいくつか抜粋して事例をご紹介します。
- 事例①:必要な人を即座に見つける
- コミュニケーションレベル2:日常会話程度の話をする関係
- 課題:社員数が多いと、各社員が担当している業務内容を把握することが難しくなり、必要な時に必要な人が見つからない問題が発生する。
- IT活用法:即座に必要な情報を持つ担当者/社員が見つかる社員検索システム。組織図などから視覚的な検索が可能。
- 事例②:組織としてのDo(やり方)とBe(あり方)を伝える
- コミコミュニケーションレベル4:相手と知識や価値観を共有し、共通点を持っている関係
- 課題:社員個人の知識や会社の価値観が社内に浸透しづらく、自分と他人や会社との共通点、共感が持てない。
- IT活用法:個人と個人の共通点は電子社内報で共有し、組織の価値観は社内ポータルで情報発信。
社員自らが語れるコンテンツや社長や幹部のつぶやきコンテンツで、社員同士や経営層への共感を促進。
- 事例③:相談できる環境を作る
- コミュニケーションレベル5:信頼し相談し合う関係
- 課題:管理部門への相談の7割は手続き関連の問合せ。適切なコンテンツがないため、現場部門が迷った末の直接問合せが多い。管理部門も現場部門も、やりとりの工数がかかってしまう。
- IT活用法:社員用の業務ナビゲーションを作成。会社における業務の地図をつくることで、現場部門は情報を迷わずに探せ、管理部門は問合せ対応工数を削減。
ここに挙げた事例はほんの一部であり、ITは活用する環境や活用する人や組織のアイデアで可能性は無限大です。特に、コミュニケーションにおいては、速く・正確に・より広範囲にといったITの性質と親和性が高く、コミュニケーションにおける課題はITによってどんどん緩和されていくと考えています。
いかがでしたでしょうか?
部門間のコミュニケーションの難しさはだれしもが経験していると思います。業務上のコミュニケーションとなればなおさらです。今回のセミナーは、そんなコミュニケーションについて、組織開発のプロフェッショナルであるスコラ・コンサルトとITのエキスパートであるドリーム・アーツから、それぞれの側面での問題解決方法をご紹介しました。内容に興味を持っていただいた方がいらっしゃれば、ぜひ次回のセミナーにご参加いただければ幸いです。
▶第3回 「経営層・ミドル層・メンバー層」の認識ギャップの問題と解決策を紐解く
https://www.insuite.jp/event/se210520/
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